2020.07.13news【プレスリリース】コロナ禍における精神疾患スクリーニングツール受検者7,589人のうつ病の可能性の割合と、年代別、職業別、世帯別分析結果への精神科医の見解。

コロナウイルス関連により引き起こすうつ病の早期発見・悪化の防止を目的として、2020年5月28日より一般向けに精神疾患スクリーニングツールを無料提供する株式会社ジャパンイノベーション(本社所在地:大阪府、代表取締役社長:伊藤英樹、以下当社)は、5月28日から6月22日までにスクリーニングツールを使用した7,589人の結果データを分析し(全体、性別、年代別、職業別、世帯別など)公開したことをお知らせします。

 

 はじめに

前提として、今回の無料提供はテレビ媒体や二次メディアにてコロナうつ情報やその対策に関連する形で紹介されており、その中で

・自分の心身が健康かどうかを定期的にチェックしたい方
・最近心身に違和感がある方

等の「心の不調に関心・違和感がある方のうつ病の可能性の早期発見」を目的に案内していることから、母集団として不調者の含まれる割合が高くなる傾向は否めません。

しかしながら、今回の全体的結果に関してはうつ病の可能性がある方の割合が5割を超えるなど、通常時に比べるとコロナ禍における特殊な結果となっており、いかにコロナウイルスへの不安や2次的な環境変化が人々の日常、メンタルヘルスに大きな影響を与えてしまっているかということが見えてきました。

当社では引き続き、一人でも多くのうつ病の可能性がある方の早期発見、早期治療に繋げるべく8月31日まで一般向けに精神疾患スクリーニングツールを無料で提供しております。スクリーニングテスト受検は下記URLのサービスページより「無料で心の不調をチェックする(10分)」をクリックし、新規ユーザー登録後テスト受検が可能となっています。

https://jp-inv.com/tool/

 

 

 グラフについて

・15歳以下は診断基準が異なるため分析対象にしていません。
・全てのグラフの割合は小数点第3位を四捨五入しているため割合の合計が100を超える場合があります。

 うつ病重症度分類について

 軽度
日常生活は何とか支障なく行えており、他人とのコミュニケーションにも生じる障がいはわずかで本人には心身に違和感はあるものの、うつ病という自覚はなく、周囲もあまり気がつかないことが多いレベル。最近の傾向の自覚症状として身体症状(睡眠障害、食欲不振、全身の倦怠感など)のみの場合も多い。意識的な生活改善により、治癒が可能。

 中等度
自覚症状としてうつ症状(精神症状)を認め、それが日常生活や他人とのコミュニケーションにも支障をきたし、周囲も「何かおかしいな」と気づき始めるレベル。

 重度
自覚症状としてのうつ症状(精神症状)により日常生活や他人とのコミュニケーションが    極めて困難な状態であり、周囲も明らかにおかしいと気づく、放置するのはとても危険なレベル。

 1. 全体
 うつ病の可能性がある人(軽度~重度)の割合が受検者の5割を超え、うつ病の可能性がない人の割合を上回る結果になった。

 

うつ病の可能性がある人(軽度~重度合計)の割合が52.29%と半分を超えています。コロナ禍以前に、当社が法人向けに実施した際はうつ病の可能性がある人(軽度~重度合計)は20%未満になることが通常であり、この割合は異常に高いです。 また軽度うつ病の可能性がある人の割合が52.29%中40.9%を占める大きな割合になっていますが、重症度分類で説明した通り軽度の場合は意図的な生活環境の改善により治癒が可能ですので、軽度の場合、まず自分なりの発散方法を確立し中等度以上への増悪を防ぐことが大切です。

 

 2. 年代別受検者数
40代が2,536人と最も多い受検者数だった。

 

受検者数7,589人を年代別に分けると、40代が最も多く次に30代、50代、20代の順になっています。以降の職業別や世帯別の分析に関しては、統計解析上1,000人を超えている20代~50代に絞って分析をしていきます。

 

 3. 20代~50代の全体・男女別
年齢が低いほど、うつ病の可能性が高くなる傾向となった。

 

各年代の全体のうつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)を比較すると20代が65.2%と最も高く、以降年齢が高くなるにつれうつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)は低くなっていく傾向となりました。また各年代の男女を比較すると、どの年代も女性の方が男性よりもうつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)が高い数値になりましたが、30代までは軽度~重度のうつ病の可能性がある人の割合が全てにおいて女性が男性を上回っているのに対し、40代~50代は軽度うつ病の可能性がある人の割合に関しては女性が男性を上回っていますが、中等度・重度うつ病の可能性がある人の割合は男性が女性を上回る結果となりました。

 

4. 20代~50代の職業別
20代はどの職業もうつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)が20代~50代の全体の割合の平均以上となったが、「無職」に関しては年代に限らず、うつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)が平均を10%以上上回る結果になった。

20代~50代を職業別で分けてみると、20代は「会社員」~「無職」まで全ての職業でうつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)が20代~50代の全体の平均割合を上回る結果となり、年齢が高くなるにつれて、ほとんどの職業のうつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)が低くなる傾向になりました。また心療内科・精神科への受診が望ましい中等度~重度のうつ病の可能性がある人の割合もほとんどの職種において20代が高くなっていることから、コロナ禍においては職業を問わず、若年層ほど危険な状態であることが分かります。
一方で「無職」に関しては20代~50代まで全ての年代で、軽度~重度のうつ病の可能性がある人の割合が平均値を上回る結果になりました。

 

 年代別総括 伊藤英樹(精神科医)

予期せぬ事態が起きた時、その負担やストレスへの耐性や反発できる力(レジリエンスとも言います)は多くの場合、人生経験が長いほど強くなる傾向にあります。これは人生経験が長い方がそれだけ物事に打たれ強くなる可能性が大きいからです。「こんなこと前にもあったな」や「案外なんとかなるものだ」と思えるのは経験の賜物ですからね。

ましてや今回のように社会そのものがストップしてしまうような緊急事態であれば、40代~50代でも日常よりはるかにうつ病の可能性の割合は高くなっているのですから、若ければ若いほど先行きが不安になったり、自粛による制限に強烈なストレスを感じてメンタル不調に陥りやすくなるのは当然です。

また、人の不安要素の多くには金銭の問題が絡みます。学生でいえばアルバイトができなくなったり、会社員でいえば自分の働いている会社の存続への不安などが影響しているのかもしれません。

 

 4-1. 20代会社員と学生の比較
「会社員」と「学生」という環境の違いは、うつ病の可能性にはほぼ影響がなかった。

割合が高かった20代の中で、全体数が多く環境の違いが明白な「会社員」「学生」の間による変化は少ないと思われました。

 

4-2. 20代~50代の休職・休業中と無職の比較
「無職」は全年代ともうつ病の可能性がある人の割合(軽度~重度合計)が共通して高いが、「休職・休業中」では20代~30代と40代~50代で増悪傾向が大きく異なった。

 

20代~50代の「休職・休業中」と「無職」を比較すると、全体の職業別でも述べたように「無職」に関してはうつ病の可能性がある人の割合の合計(軽度~重度合計)が全ての年代で高い割合になっています。また中等度うつ病の可能性がある人の割合も全年代で平均を5%以上上回りました。「休職・休業中」に関しては40代~50代が20代~30代に比べて中等度以上に増悪している割合が高い結果になりました。

 

 コメント 伊藤英樹(精神科医)

そもそも「休職・休業中」の方や「無職」の方の場合は、そこに至る経緯としてすでにうつ病を発症してしまっている可能性も考えられるため、数値が高くなりやすい傾向にあると思われます。

 

4-3. 20代~50代の専業主婦・主夫
軽度うつ病の可能性がある人の割合はどの年代も20代~50代の全体の割合の平均より高いが、重度まで増悪している割合はかなり低い。

 

 

「専業主婦・主夫」に関しては軽度うつ病の可能性がある人は平均より高くなっていますが、重度うつ病の可能性がある人の割合は40代のみ1.6%でその他の年代は0%と、低い割合となりました。

 

 コメント 伊藤英樹(精神科医)

「専業主婦・主夫」の方は常に家が職場です。そのため自粛によりコミュニケーションの場を制限されたことで発散ができなくなったことや、本来一人で過ごせていた自由な時間に、誰か人がいるということが、軽度うつ病の可能性が高くなっている原因ではないかと予想できます。しかしながら重度うつ病の可能性が少ないのは、コロナ禍においても生活の変化が比較的少なく(家を中心にしているため)、夫婦で住んでいるおかげで不調に気づいてくれる相手がいるということが関連しているのかもしれません。

 

 5. 20代~50代の世帯別
20代は家庭環境関係なく全ての世帯が高い割合となったが、40代まで含めると「単身」「ひとり親と子供」の割合の高さが軽度~重度うつ病の可能性がある人の全ての割合で目立つ結果になった。

 

20代~50代までを世帯別に分けてみると、20代は職業同様全ての項目で割合が高くなっていることが目立ちますが、「単身」に関しては20代~50代まで共通して重度うつ病の可能性がある人の割合が平均を超えました。また30代~40代では「ひとり親と子供」の中等度うつ病の可能性がある人の割合が共に15%以上と高くなっています。

 

5-1. 20代~50代の単身と夫婦のみの比較
軽度うつ病の可能性がある人の割合は共に20代~50代の全体の割合の平均を超えている年代もあるが、中等度・重度うつ病の可能性への増悪状況に関してはパートナーがいる・いないで差が出ていた。

 

 

「単身」の20代~50代を見ると、軽度~重度うつ病の可能性がある人の割合の中で必ず平均を超えている部分がありますが、「夫婦のみ」は20代~30代は軽度・中等度うつ病の可能性がある人の割合は平均は超えているものの、40代~50代になるとどの項目も平均未満になっており全年代共通して重度うつ病の可能性がある人の割合は平均未満となりました。

 

 コメント 伊藤英樹(精神科医)

自粛によってパートナーの存在がストレスになることはもちろんありますが、「専業主婦・主夫」でも言った通り、うつ病の増悪に大きく影響するのは気づかずに放置することです。故に変化に気づいてくれるパートナーがいることが、早期発見に繋がり、増悪を食い止めてくれる大きな要因になる可能性は十分に考えられます。

 

5−2. 20代~50代の夫婦と子供とひとり親の比較
軽度~重度うつ病の可能性がある人全ての割合において「ひとり親と子供」が「夫婦と子供」を上回る結果になった。

「ひとり親と子供」のうつ病の可能性がある人合計(軽度~重度合計)の高さは全世帯項目の中でも非常に高い割合になっており、20代~40代は全てうつ病の可能性がある人の合計(軽度~重度合計)が平均を5%以上上回る結果になっています。一方で「夫婦と子供」は20代こそうつ病の可能性がある人の合計(軽度~重度合計)が平均より5%以上高い59.38%になっていますが、その他の年代ではうつ病の可能性がある人の合計(軽度~重度合計)が平均以下となりました。

 

コメント 伊藤英樹(精神科医)

うつ病になる方は元々一生懸命な人が多く、片親の場合女性は父親の代わりを、男性は母親の代わりを必死に一人二役担おうと努力します。ただでさえ大変な状況の中でこの異常事態ですから、「ひとり親と子供」の中でも特に小学生頃までのお子様をひとりで育てている方の負担は計り知れません。「夫婦と子供」と「ひとり親と子供」の結果に大きな差が出ているのは、ふとした時に弱音を吐ける、相談できる相手が側にいるかどうかが大きい可能性も考えられます。

 

5ー3. 20代~50代の夫婦と子供と二世代世帯の比較
20代~30代では、「二世代世帯」の軽度うつ病の可能性がある人の割合が「夫婦と子供」を10%以上上回る結果になった。

20代~30代の二世代世帯の軽度うつ病の可能性がある人の割合は20代の場合最も高く、30代も三世代世帯に次いで2番目に高くなっています。これは「夫婦と子供」や「夫婦のみ」と比べると10%以上上回る割合になりました。

 

コメント 伊藤英樹(精神科医)

「ひとり親と子供」と「夫婦と子供」の比較の際に相談できる相手が側にいることが影響していると話しましたが、逆に同居している大人がたくさん増えることが、負担になったり何らかのストレスがたまる要因となることがあります。しかしながら20代30代の重度うつ病の可能性がある人の割合がかなり低くなっているのは、常のイライラとは逆に、結局困った時には救われているからかもしれません。

 

6. おわりに

繰り返しになりますが、軽度うつ病は早期発見できれば生活環境の改善などにより治癒の可能性があります。また中等度、重度うつ病であればいかに早く治療できるかどうかで、回復レベルに差が生じることもあります。

うつ病は日常的なレベルの疾患でもあり、誰でもなり得る病気なのです。早期に気づけば回復も早く重症化しません。

この不安定な時期に、ひとりでも多くの方がうつ病に軽度の段階で気づき、増悪をさせないように自分の状態を知るセルフチェックツールとしてこのスクリーニングテストをご使用ください。

 

本件に関するお問い合わせ

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